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東京高等裁判所 平成2年(ネ)37号 判決 1990年5月30日

控訴人 田所テック株式会社

右代表者代表取締役 田所明敏

右訴訟代理人弁護士 吉田修平

被控訴人 三興鋼材株式会社

右代表者代表取締役 池田謙二郎

右訴訟代理人弁護士 畠山保雄

同 石橋博

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人は、控訴人に対し、金九一四万六六二円及びこれに対する平成元年六月一七日から支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

4  仮執行宣言

二  控訴の趣旨に対する答弁

1  本件控訴を棄却する。

2  訴訟費用は、第一、二審とも控訴人の負担とする。

第二当事者の主張

当事者双方の主張は、原判決事実摘示のとおりであるからこれを引用する。

第三証拠《省略》

理由

一  当裁判所も、控訴人の本訴請求は、失当としてこれを棄却すべきものと判断するが、その理由は、原判決四枚目裏五行目の「配当表は」以下、七枚目表八行目の「留意すべきであろう。」までを次のとおり改めるほか、原判決理由説示のとおりであるからこれを引用する。「一般債権者は、執行目的財産の交換価値に対して実体法上の権利を有するものではなく、実体法的には、債務者の財産から請求債権の満足を受ける地位を有するにとどまり、その点では任意弁済の受領と変わるところはない。ところで、任意弁済において、債務者が複数の債権者に平等弁済をしなかった場合、ある債権者への多額弁済が当然に少額弁済受領者の「損失」によるものということはできず、少額弁済受領者から多額弁済受領者に対する不当利得返還請求権は認められないというべきである。そして、配当においても、執行目的財産の交換価値を実体法上把握していない一般債権者については、任意弁済の場合と同様、ある債権者への多額配当が当然に少額配当受領者の「損失」によるものとはいえないというべきである。」

二  よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担について民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田尾桃二 裁判官 滿田昭彦 橋本昌純)

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